仙台高等裁判所 昭和27年(う)894号 判決
職権をもつて原判決の擬律を調査するに、原審は被告人の原判示所為につき刑法第百九十九条第二百三条を適用した上、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合に該当するとして、同法第五十四条第一項前段第十条により犯情の重い小笠原春治に対する殺人未遂の罪の刑に従つて処断している。しかし、原判示事実記載の如く被告人は、大久保チエを殺害せんとして匕首をもつて同女の腹部を一回突き剌し、続いて之を制止しようとした小笠原春治の左前、右前胸部及び左大腿部を突き剌したが、孰れも殺害するに至らなかつた場合には、被害者毎に一罪を構成するものと認めるのを相当とするので、同法第四十五条前段の併合罪とし後記自判の際摘示のとおり併合加重をして処断すべきである。よつて、この擬律を誤つた原判決は判決に影響を及ぼすべき法令の適用に誤を冒したものというべきであるから破棄を免れない。